明石市民フォーラム

第6回「どうなる明石の小児救急~小児救急の危機~」Q&A

「小児科医の数が減っていると報道されていますが何故でしょうか」
「正確に言うと、小児科を主に標榜している医師数は減ってはいません。わずかですが、増えています。今、問題の産科の医師数は実数として確実に減っているのですが。」
「では、どうして小児科医が減っていると報道されるのですか?」
報道される小児科医とは救急医療にたずさわることのできる小児科医の数のことです。これは、確かに減っています。」
「その理由はなんでしょうか?」
「小児救急の場合おもに病院の小児科に初期から二次、三次の患者受け入れの負担が大きくかかっていのですが、その病院小児科で働く医師の数が全国的に減っていることがまず挙げられます。」
「その理由を教えて下さい。」
「まず、昔から病院において小児科は不採算部門であり、経営上の観点から民間病院ではこのような不採算の小児科はなかなか維持出来ません。そのためわが国における、病院小児科は大半が国公立か日赤のような準公立病院です。しかし、公立病院も長年の医療費引き締め政策と地方財政悪化で、不採算部門の整理が急速に進みました。その結果病院小児科の数は10年以上前から減少しています。これに加えて、人材を派遣してきた大学病院の小児科への新卒者の希望者が減り小児科医を新たに派遣する余裕がなくなったため各地で病院小児科の閉鎖や定員割れ現象が出てきました。」
「そうすると、病院小児科の数を増やせば問題は解決するのでしょうか?」
「いいえ、今は病院小児科の数を増やしても解決にはなりません。救急の現場で働く小児科医が減ってしまったからです。先程も申し上げましたが、大学医学部の小児科に入ってくる医師が全国的に減っています。原因には少子化もありますが、別の原因として新しい臨床研修医制度が2年前から始まって医学部卒業生が以前のように大学病院での研修を選択しなくなったことがあります。そのために大学病院の小児科医が減って他の病院に派遣する余裕がなくなりました。もう一つの理由は女性医師が増えたためです。」
「なぜ、女性医師が増えた事と関係があるのですか?」
「もう10年以上も前から医学部に入ってくる学生の3割以上、多い所では半分が女性です。そのため若い小児科医に占める女性医師はほぼ半数にもなります。女性医師の場合、結婚、出産すれば夜間、深夜におよぶ救急の仕事は現状では困難です。その為、小児科医になっても出産、育児のため仕事を辞めてしまう女性医師が増えて、残りの医師に負担がかかり、その休みも満足に取れない忙しい現状を見た新人の医師が、小児科を選択しなくなるという悪循環に陥っています。これは、今問題になっている産科でも同じ事情です。」
「では、どんな対策が考えられているのでしょうか?」
「育児がひと段落した女性医師に現場へ復帰してもらう再教育システムをつくることですが、誰が、どこで行うのか、まだ計画段階で、指導医も予算も必要です。また、再教育後に病院小児科のハードな現場にどれだけ復帰してくれるのかも定かではありません。」
「他に対策はないのでしょうか。」
「小児科学会が提案して厚労省が進めている病院小児科を集約化する方法があります。」
「具体的にはどういうことか説明してください。」
「各地区に分散している病院小児科を基本的に二次医療圏で一つに集約して、 小児科医をそこへ14~5名集中配置する案です。これだと、深夜の救急にも対応可能だといっています。」
「実際に実現可能でしょうか?」
「大きな都市では可能でしょうが、地方では集約できるだけの小児科医自体が集まらないので不可能という声も聞きます。また、集約化によって地域から病院小児科がなくなる所もでてくるので、住民にとってはかえって不便になることもあり得ます。」

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「明石市の場合はどうなるのでしょうか?」
「明石市は東播磨臨海医療圈に属します。ここで病院小児科を集約化すれば現在NICUもある加古川市民病院に集約ということになります。」
「その、NICUとは何のことですか?」
「Neonatal Intensive Care Unit の略で新生児集中治療室のことです。小さく生まれたり、疾患のある新生児を専門に扱う場所です。ここも、小児科医が担当しますが24時間365日受け入れ体制をとる必要があります。」
「すると、一般の小児科救急だけでなく新生児医療にも休みなく対応しているわけですね。」
「はい実は、この新生児の集中治療室を担当する小児科の医師を確保することさえ今は大変困難になりつつあります。」
「将来、明石市内の病院から小児科がなくなる可能性があるのでしょうか?」
「今のところは、その可能性は少ないのですが、今後、深夜帯に対応できる病院が少なくなれば加古川市民病院に集約という選択も出てきます。加古川にある夜間急病診療所も小児科医の確保に苦労しており、近い将来小児科の深夜受付ができなくなる可能性もあります。」
「私達はどうすれば良いのでしょうか?」
「医療制度や医師の育成は国が考えて設計しており、予算の配分も含めて、その責任は国にあります。制度のひずみから生じるいろいろな不都合に対して現場のスタッフができることには限度があります。しかし、患者さんからのクレームはすべて現場に向かい、スタッフは対応に追われています。
例えば、待ち時間が長いと言ってスタッフにくってかかる方もいますが、かかりつけ医とは違って、初めて診る患者さんの診察には時間が必要です。少ないスタッフと予算で、なんとかやりくりしている現状をご理解ください。
また、女性医師が増えていることは10年も前からわかっていたことですが、実際に問題が出てくるまで何の対応も取らなかった厚労省には大きな責任があります。また、病院小児科医が疲労困憊して辞めていく状況がわかっていても放置していた、医療提供側にも責任があるでしょう。これは小児科だけでなく、産科でも同じことが言えます。 石油と同じように医療も限りのある資源です、医療現場に対する利便性の追求ばかりでは資源は枯渇します。」
小児救急医療を上手に受けるために
・・・日本小児科学会の作ったサイト「こどもの救急」を参考に・・・
明石市医師会のホームページから 「救急医療をうけるには」をクリックして下さい。次に「こどもの救急」のバナーが出ます。このサイトの「症状のリスト」をチェックすることで、すぐに受診するか翌日まで持てるかの参考意見が得られます。
小児科の救急医療を良くするためのご意見は直接厚労省へ
担当、厚生労働省医政局指導課 fax 03-3503-8562 まで

次回の市民フォーラムは3月10日(土)午後2時から市民会館にて介護難民をテーマに計画中です。